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三井物産は17日、同社が運営する販売支援サービス「リンクシェア」を経由した物品の販売額が昨年末で200億円を超えたと発表した。同サービスはいわゆる「アフィリエイト(提携)プログラム」を、オンラインショッピングサイトが導入する際に使うもの。「アフィリエイト」が広がってきたあらわれと言えそうだ。
「アフィリエイトプログラム」ではオンラインショップと評価サイトなどが提携した上で、ショップの商品がその紹介・評価サイトを通じて経由して売れた場合に、売上高などに応じて経由元のサイトに一定のマージンが支払われる。アマゾンドットコムが多くの評価サイトと提携して売上を伸ばしたことで、ネット上の成果報酬型のマーケティング手法としては以前から知られている。
リンクシェアは評価サイトを訪れた個人のID(クッキー)を識別し、実際に提携先のオンラインショップで商品を購入したかどうかを追跡できる。オンラインショップは登録料を支払えばリンクシェアのリストに入れる。リンクシェアに参加すれば、集客力のある評価サイトから新たな顧客がやってくる可能性が高まるわけだ。通常のバナー広告と比べ、客が実際に買い物をして初めて紹介元のサイトへの報酬が発生する点で効果が見えやすい。
2001年3月のサービス開始から3年で、140社の大手オンラインショッピングサイトが登録。一方で25,000のサイトが、商品を紹介するアフィリエイトサイトとして参加している。リンクシェアのシステムを経由してオンラインショップに客を誘導した数は、昨年末で月間1,000万人と一昨年の約5倍に拡大した。昨年7月に「月刊ネット販売」(通販新聞社刊)が実施したオンラインショッピングサイト400社へのアンケートでは、38%がアフィリエイトプログラムを導入済みという。また「米国では既に物販系サイトの6割がアフィリエイトを使用している」(三井物産)。
三井物産が発表した事例では、ショッピングサイトの「JALショッピング」の売り上げの25%がリンクシェア経由で、他のサイトから来て実際に商品を購入している。エプソンのオンラインショップ「エプソンダイレクト」でもリンクシェア経由の月間売上高が20%、新規顧客におけるアフィリエイト経由の割合も20%に上るなど、アフィリエイトの存在感が高まっている。
アフィリエイトが伸びている理由として、三井物産メディア事業部でリンクシェアのプロジェクトマネージャーを務める花崎茂晴氏は「ブロードバンドの普及で多くの消費者が情報の発信者としてネットに参加し、彼・彼女らの口コミ情報が大きな威力を持ち始めた」ことを挙げている。「価格比較サイトのカカクコムは広告収入以上に、アフィリエイトによる手数料収入があると聞いている。デルのパソコンを紹介する個人サイト『デル通』では、昨年半年の売り上げが約1億5千万だった」(花崎氏)。個人でアフィリエイトのサイトを運営し、月収100万円を越える人も出てきているという。花崎氏は「将来的にBtoCのオンラインショッピングの20%がアフィリエイトサイト経由によるものになる」と期待している。
いま関係者はウェブログなど急拡大する個人間のコミュニティーでの、口コミの販売促進力をいかに取り込むかに注目している。ネット上の消費者行動とマーケティングに詳しい立正大学経営学部助教授の森田正隆氏も「ネット上の個人や消費者の力はますます拡大し、商品の売れ行きに影響を及ぼすだろう」と指摘する。ただ、これらのコミュニティーはもともとボランティア的な組織。「報酬が関わってくると、純粋な評価と受け取られるかどうかわからない。関係が変わってきてしまうかもしれない」(森田氏)との指摘もあり、ネット上のマーケティングにはさらに知恵が必要になりそうだ。
(日本経済新聞 2004/3/17)